相続は、相続税対策をはじめさまざまな手続きが必要です。しかし、何から手をつければよいのか、いつから始めればいいのか迷っている方が多いのではないでしょうか。
そういった方には、まず相談をしていただければと考えています。生前対策は早いうちから行うことで、より効果的な対策を講じることができます。さらに、こうした生前対策には相続をされる次の世代の方が迷わずスムーズに手続きができるよう、準備をしておく効果もあります。
また、事業を展開されている方においては、事業承継を行う必要もあるかもしれません。特に近年は中小企業において、事業承継をうまくできなかった結果、廃業してしまうケースも少なくありません。こうしたことを防ぐためにも事業承継を間違いなく行うことも生前対策の重要なポイントです。事前にしっかりと計画的に承継を進めることで、国が講じている中小企業の事業承継支援策を最大限活用することができ、事業承継の実現につながります。
平成30年度税制改正において、事業承継時の贈与税・相続税の納税を猶予する事業承継税制が大きく改正され、10年間限定の特例措置が設けられました。
※特例事業承継税制の適用は、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて作成された「特例承継計画」を都道府県へ提出することを条件に、認められます。「特例承継計画」の提出期間は平成30年4月1日から令和5年3月31日までの5年間とされています。
当事務所は認定経営革新等支援機関の認定を受けています!
事業承継をお考えの方は、お気軽にご相談ください!
詳細をご希望の方はご遠慮なくご連絡ください。
次のことをやっておくことが、相続をスムースにし、混乱を防止軽減するために必要です。
①予定被相続人が生前中に認知症になったらできないこと
㋑預金凍結=引出不可
㋺遺言書作成
㋩贈与
㊁資産売却
㋭不動産賃貸
㋬信託契約
対策 1
任意後見人契約(任意後見契約に関する法律
(成年後見制度の利用の促進法) + 公証役場で作成しかつ 任意後見契約の登記 + 委任契約
任意後見制度だけでは財産の管理はできるが処分するには、家庭裁判所の許可が必要。
任意後見制度は、判断能力が低下した場合に備えて後見人を決めて契約するもの。
初期費用以外に毎月の費用もかかる。
契約時に記載のない権利は使えない。
追加はできない。
取消権がない。
対策 2
家族信託であれば財産管理だけで無く、運用、処分が可能
(建物の建築、解体、賃貸など)
対策 3
銀行の代理人カードを作成する。(但し実務的には、銀行は紛争に巻き込まれるのを避けるため推奨宣伝はしていない。)
その代わりの方法として、親の預金口座のキャッシュカードの暗証番号を聞いておき、必要なときには、相続予定者が引き出す。
(但し勝手に何に使ったか不明では、後日その他の相続人からクレームがくるのでしっかりとメモと証拠書類を整理しておくこと)
②予定被相続人(生前中)
相続が起きたらそこで終わり。
③相続人
成年後見人を選任 ※ その後 相続が起こったときには成年後見人が認知症になったその相続人に代わって遺産分割協議に参加して遺産分割をする。 |
成年後見人の選任等の手続き
保佐 補助は 省略
法定後見の開始(民7)
精神上の障害により事理をを弁識する能力を欠く常況にある者については家庭裁判所は本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により後見開始の審判をすることができる。
成年被後見人の法律行為(民9)
成年被後見人の法律行為は取り消すことができる。
【 大きな流れ 】おおよそ2ヶ月かかる。
家庭裁判所へ申し立て → 審理(調査官の調査 親族への照会 鑑定)
審判(後見等の開始 後見人等の選任を裁判官が判断)→ 審判の確定 → 法務局へ後見登記(戸籍への記載はしない)
平常時からやや判断能力に不安がでてきた段階での財産管理等の手法
1)財産管理契約の締結
内容:信頼できる親族や士業者(弁護士、司法書士など)に対し、自己の財産管理を任せる旨の契約をする。
①預貯金の管理・払い出し
②各種公共料金や病院等への支払
③所有不動産等の賃料収入管理、記録や修繕の手配
<メリット>
受任者の選択は自由 個人のニーズに対応した個別的事情を折り込むことが可能(葬儀方法の希望も)
緊急でないので余裕をもって契約内容を吟味できる。
<デメリット>
受任者による財産管理が開始後は適切に行われているかを監視、監督する者がいないことが大半そのため財産の横領、費消等の危険性が非常に高い。
防止対策として、財産管理を依頼された人とは別の親族や第三者等が定期的に報告を受け、チェックをする体制が必要。
2)任意後見契約の締結
<メリット>
任意後見監督人が選任されるので、任意後見人による財産管理につき第三者の監督、チェックが働く。
公証人が契約内容や判断能力の程度など、本人の状態等を確認するので後日に契約が無効となる可能性は低い。
<デメリット>
任意後見人は、任意後見監督人に対して、定期的に財産管理の報告をし、監督を受けながら後見事務を行う。そのため、成年後見人と同様の事務的な手間、労力がかかる。
任意後見人の代理権限は財産管理に限られる。
本院の身上監護(生活、療養看護)に関する事項や死後の事項は含まれない。
3)民事信託の利用
4)遺言書
自己が相続時に所有する財産について相続内容をあらかじめ決めておく。
<メリット>
自筆遺言、公正証書遺言
<デメリット>
特に自筆遺言は後日その有効性を争うことになりやすい。
遺言書作成から死亡日までの間に財産内容、相続人等の変化がおこることがあるので事情に応じて見直し作成し直しが必要
5)高齢者施設等への入居契約の検討
将来的に認知症が低下し、他人の介護が必要となった場合、生活拠点や入居施設等につき検討する。
<メリット>
自宅からの距離、サービス内容、料金等を長期的なスパンで吟味する。
施設によっては判断能力の有無に関係なく入居可能。
<デメリット>
緊急の場合は自分の希望条件どうりの施設に入居できないこともあり。またサービス内容や料金に関しての説明不足や認識の違いからトラブルになることもある。
日常活動の一部に支障が生じて、認知機能の低下を現実に感じてきた。
物事の理解や記憶力等に問題が生じてきた。
医師からも初期軽度の認知症の疑いがある旨の診断をうけた。このような状況になったら速やかに次の対処が必要です。
1)後見制度の申し立て(成年後見人 保佐人 補助)
本人の判断能力低下の程度に応じて民法が定める各種の後見制度を利用する。
<メリット>
財産管理の法的体制が整う。
詐欺被害や財産の散逸等の事態を回避できる。
<デメリット>
一度後見が開始すると通常は、本人が亡くなるまで後見人等が財産管理権を有する。
よって、本人が亡くなるまで財産管理や報告の事務負担が継続する。
また後見人等が自身の判断だけで辞任することもできない。
2)日常生活自立支援事業
全国各地の社会福祉協議会と利用契約を締結することで支援が受けられる。
①相談 ②公共料金等の支払サポート ③預金通帳や実印の保管代行
の財産管理支援等に関し専門の支援相談員のサポートが受けられる
<メリット>
身近に面倒を見てくれる親族がいない場合でも社会的信用のある
機関により支援を受けることができる。
身上監護面において生活全般の困りごとにつき細かなサポートを受けられる。
<デメリット>
各関係機関への申請提出は本人または親族が自ら行う必要あり。
サービス利用に伴い料金がかかる。
日頃、あまりコミュニケーションのない状況にある兄弟姉妹の場合、親が認知症になったり、亡くなった場合、日頃は兄夫婦に親の世話や預金管理を同居の兄夫婦に任せっぱなしにしている次男や次女が事後的に親の預金の使途を追求するケースがあります。
『この預金引出○○円の使い道は?証拠書類は?』と大きな金額になればなるほどその傾向がある。大きな金額でなくても少額でも何回も発生していれば、ちりも積もればではないがそこそこまとまった金額になることがある。
親が任せ放しにしていることをよいことを利用して、自分の好きなように親の金を使っているのでは?という疑念を持つ場合もありうる。
そのような時に、親の家計簿、預金管理簿を作成しておくと、疑問の大半は解決すると思います。
最近はスマホソフト、パソコンソフトをつかって情報の共有化ができる仕組みもあるので、利用してみてはいかがでしょうか?
認知症と相続、財産管理の実務(弁護士 栗田祐太郎 著)清文社
【事例1】
認知症の財産管理能力に問題が発生
父の性格が頑固で財産管理を家族にも任せない場合はどうするか?
粘り強く本人の人格プライドを傷つけないように尊重しつつ説得し本人が納得するようにする。
本人の信頼できる医師や第三者、専門家の力を借りることも選択枝である。
資産状況を家族が把握し、資料情報収集をする。
【事例2】
悪質な第三者が認知症の親に近づいてきた。
直ちにその悪質な第三者(と思われる人)との接触を回避する。
概ねその第三者は財産目当てなのでその話が出る前に家族が話を断る。
【事例3】
悪質な第三者が、認知症の父に近づいてきた。
しかし、親が契約までしてしまった。
この場合は無効主張ができるので弁護士に相談の上、手続きを無効にした。
【事例4】
会社代表者の判断能力が低下してきた。
直ちに家族又は幹部を社長に変更した。
概ね、認知症に罹ると悪化することはあるが、高齢者の場合は回復の確率は低い、従って回復を期待するのではなく、悪化しても、経営に影響の少ないように手を打つことが重要です。
会社法331条 成年被後見人、被保佐人は取締役になれない。
相続対策も必要ではあるが、家族の争族にならないようによく話し合うことが重要です。
認知症になった場合は、健康な場合の諸手続きがスムースに進められないので弁護士、司法書士等によく相談すること。
【事例5】
家族の財産管理者が他の家族(例えば妹)から使い込みと言われて訴えられた。
濡れ衣として疑いの目でみられた。支出一覧表の作成、領収書請求書等の書類の整理保存が必要
【事例6】
相続人の中に認知症患者がいた。
成年後見人の選任 家庭裁判所に特別代理人の選任をする。
【事例7】
死後に遺言書の無効の訴えを受けた。
遺言能力 筆跡鑑定。公正証書遺言でも無効とされる場合がある。
原因は遺言能力の確認不十分。
【事例8】
死後に婚姻、養子縁組の無効が争われることがある。
財産目当ての婚姻、養子縁組を企てる者がいた。(後妻業?)
婚姻、縁組みの意思の不存在、届出意思の不存在
一つでも該当する場合は、相続に備えて早めの対策をお勧めいたします。